仕事のこと
食品工場の水処理から始まった信頼関係
課題解決の先にあったもの
メーカー商社として、ものづくりに新たな価値を創造するリックス。営業担当Uさんは、担当する食品工場の課題に直面した。関係各所を巻き込み、最終的には通常の契約とは異なる「サブスク契約」を提案。その挑戦の舞台裏に迫る。
工具メーカーから転身
幅広い提案で顧客課題を解決。
リックス大阪営業所のUさんは、中途入社4年目を迎えた営業担当だ。前職では工具メーカーの営業としてキャリアを積んだが、「もっと幅広い選択肢をお客様に提案したい」という想いから、リックスへの転職を決意したという。
リックスはメーカー商社という独特な立ち位置。一つの製品を極めるメーカーと異なり、商社は多岐にわたる製品を扱う。
Uさんは「お客様の課題に対して、最適なソリューションを提案できる面白さがリックスにはある」と語る。一方で、その難しさも痛感してきた。「多すぎる選択肢の中から、お客様に本当に必要なものを見つけ出すのは至難の業だ」とUさんは言う。しかし、この難しさが、彼を成長させてきた。
食品工場での挑戦、始まる
そんなUさんに転機が訪れたのは、とある食品工場でのプロジェクトだった。この工場では、マヨネーズやドレッシングを製造しており、その過程で出る「排水を処理する設備の改善」の依頼がUさんに入った。
お客様が抱えていたのは、設備運用の不安定さだった。季節や生産量の変動によって、排水の状態が大きく変わり、排水をろ過する「膜」に負荷がかかりやすかったのだ。製造しているのがマヨネーズやドレッシングのため、特に冬場は油分が固まりやすく、膜の詰まりが頻繁に発生。高額な膜の破損リスクを常に抱えていた。お客様は「安定稼働を維持したいが、突発的な修理費用は避けたい」と頭を悩ませていたのだった。
この難題に、リックスはUさん、仕入先様のプラントメーカー、膜メーカーと協働して臨んだ。
その中でUさんが担ったのは、お客様と各社の間に立つ調整しつつ旗振りをする重要な役割だった。
仕入先様とお客様の懸け橋に。ニーズを読み取る徹底的なヒアリング
プロジェクトは、Uさんの想像以上に難航。情報が錯綜し、関係者間の認識にズレが生じる可能性があった。また、転職して経験が浅かったUさんは水処理設備や膜についての知識が薄く、当時の状況を「お客様は専門用語で話し、仕入先様は仕入先様の言葉で話す。その間に立って、両者の意図を正確に理解し、伝えるのが何よりも難しかった」と振り返る。
そこでUさんは、ある工夫を凝らした。お客様へのヒアリングに徹底的に時間を費やしたのだ。単に「何が困っていますか?」と聞くのではなく、「なぜその問題が発生すると感じているのか?」「そのデータはどう活用したいのか?」と、課題の背景を深く掘り下げていった。
また、知識不足を補うため、仕入先様に教えてもらったり、数多く現場に入って設備を見ることを心がけた。
難しいプロジェクトだったが、Uさんは「この契約はお客様にとって絶対に必要だ」と確信していた。単なる押し売りではなく、導入すれば必ずメリットがあるという自信があったからこそ、お客様に熱意をもって話すことができたという。
どうすれば「お客様が安心して設備を運用できるか」が最重要
水処理設備の膜の交換には、数千万円という巨額の費用がかかる。これを一度に負担するのはお客様にとって大きなハードルとなる。しかし、月額費用という形で積み立てていけば、突然の出費リスクを避けられる。また、サブスクにすることで、点検や分析、定期報告といった運用サポートも継続的に提供できる。
「ただ製品を売るのではなく、『どうすればお客様が安心して設備を運用できるか』を常に第一に考えて行動した」というUさん。その結果、今では排水処理以外の相談もしてもらえるようになるなど、深い信頼関係を築くきっかけになった。
契約がゴールじゃない― 更なる信頼構築へ邁進
サブスク契約の締結はゴールではない。むしろ、お客様との関係をさらに深めるためのスタートラインだ。一度契約を結べば、定期的な訪問や連絡を通して、お客様の新たな課題やニーズを常にキャッチアップできる。「今では、排水処理以外の設備や課題についても相談が寄せられるようになった」とUさんは嬉し気に語る。
Uさんが目指すのは、「お客様に必要とされる存在」だ。そのためには、メーカーや仕入れ先からも信頼されなければならない。メーカーの立場を尊重し、お客様との間に立ち、双方にとって最適な解決策を見つけ出す。そうすることで、メーカーからも「あの案件ならリックスに任せよう」と、新たなビジネスチャンスを託されるようになった。
「お客様の課題を解決するだけでなく、仕入先様ともwin-winの関係を築きたい」。リックスの未来を担うUさんの挑戦は、これからも続く。